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事業案内

1. パイプライン

2. RN-032

iPS細胞由来ネフロン前駆細胞(iPNC)による慢性腎臓病(CKD)の細胞療法

私たちは、とてもユニークかつ現実的なアプローチで、腎不全で苦しむ患者を救うことを目指して研究開発活動を行なっております。

腎臓の基本的役割は、血液をろ過し、不要な水分や老廃物を尿として排出することです。腎臓には、大動脈から分岐した腎動脈を通じて体中の血液が流れ込みます。血液はこの腎動脈から徐々に細くなる動脈を通って最も細い細動脈に入り、糸球体と呼ばれる場所へ運ばれます。

糸球体では血液がろ過され、原尿(尿のもとになるもの)になり、尿細管を通ります。尿細管では必要なものは再吸収され再び血液に運ばれます。
この糸球体と尿細管からなる小さな単位をネフロンといいます。1つの腎臓には約100万個のネフロンがあります。

腎臓病は、腎臓の糸球体や尿細管が障害されることで、腎臓の働きが悪くなる病気です。腎臓の機能は一度失われると、回復することがまれで慢性腎不全といわれる病態に進行していきます。

腎臓病の治療には一般療法、食事療法、薬物療法、透析療法、血漿交換療法などがあり、そのときの病状に応じて治療法が決められますが、どれも根本的な治療法ではないのが現状です。

腎臓病で怖いのはさまざまな合併症です。
(1) 水分や塩分の排泄が機能しなくなるとむくみ、高血圧、肺水腫といった症状が現れます。
(2) 酸や電解質の排泄ができなくなると体に酸のたまるアシドーシスになったり、高カリウム血症や高リン血症になります。
(3) 老廃物が排泄できないと尿毒素症になり、嘔吐や意識障害などが現れます。
(4) 造血ホルモンの産生ができないことで貧血になります。
(5) ビタミンDの活性化の障害は低カルシウム血症、骨の量や質の低下をもたらします。

このような状態にまで腎機能が低下してくると、医師からは、透析や腎移植などの腎代替療法を勧められます。もしも、ここで医師からの勧めを拒否し、透析や腎移植をしないままでいると、腎機能低下にともなう症状や合併症はさらに悪化していきます。そして、やがては心不全などの合併症を起こし、生命の危機にさらされることになります。

透析療法とは、腎不全によって体内に蓄積した老廃物(尿毒素)や余分な水分を除去する方法の総称です。

現在、日本には約33万人もの透析患者さんがおり、そのうちの約7千人の患者さんは、30年以上透析を続けています。多くの患者さんが自分のライフスタイルにあわせながら、透析とうまくつき合いながら生活しています。

腎移植は、末期腎不全患者に対し新しい腎臓を移植することで腎臓の機能を回復させる治療法です。 末期腎不全患者における透析に替わる治療法の一つとなります。 提供される腎臓提供者の生死により、死体腎移植および生体腎移植に大別されます。

日本は諸外国に比べてとりわけ脳死状態での腎移植がさまざまな問題から進んでいません。倫理的な問題以外にも医療システムの問題などさまざま原因 があり 、現状では年間1700例程度にとどまっているのが現状です。これはアメリカでの腎移植が毎年2万人以上であるのに比較して非常に少ないといえます。

こうしたなか製薬企業は低分子の治療薬の開発を急いでいるのですが、腎臓は複雑な臓器であり、かつ腎不全は複合的な要因による疾患なので、ある特定の作用機序をもつ低分子治療薬で今のところ効果を発揮できているものは非常に少数です。

当然ながら、再生医療による治療がもっとも待ち望まれている疾患領域であるといえると思います。

リジェネフロ社のアプローチはとてもユニークで、かつ現実的です。

まずiPS細胞から分化誘導によりネフロン前駆細胞という細胞を作り出します。ネフロン前駆細胞は最初にご説明した腎臓のろ過装置そのものである糸球体と尿細管をつくるもとになる細胞です。ネフロン前駆細胞は我々の開発した純化法、培養法により、不純物を取り除き、人に投与することができるほどの分量まで増やしていけると考えています。腎臓は被膜に覆われているのですが、ネフロン前駆細胞はこの腎臓と被膜の間に特殊なデバイスを使って投与されます。想定では、このネフロン前駆細胞は様々な栄養因子を腎臓に送り込み、壊れかけた腎臓に元気を与えてくれると考えています。被膜下に投与することで腎臓に直接的、局所的にパラクライン効果をもたらすことが可能と考えています。

今、このような治療の効果は小動物をつかった試験のなかで有効性が確認され、製造プロセスの開発が進んでおります。製造プロセスの開発にあたっては、様々な専門的な技術を持つ提携先と協力して進めており、例えばスケールアップの手法については日機装株式会社と共同開発しております。

この新しいアプローチにより透析に移行する患者さんをできる限り少なくしてゆきたいというのが我々リジェネフロ社の切なる願いです。

 

3. RN-014

常染色体顕性(優性)多発性嚢胞腎(ADPKD)の新規治療薬開発

ADPKDは両側の腎臓に多数の嚢胞(液体のたまった袋)が次第に発生・増大し、徐々に腎機能障害が進行する遺伝性の難病で、70歳までに約半数の患者さんは人工透析や腎移植を必要とする末期腎不全に至ります。トルバプタンという薬が嚢胞の増大を抑制する薬剤として承認されていますが、今のところ根治的な治療法はありません。

ADPKDについては、これまでマウスやラットを用いて多くの基礎研究がなされてきました。しかし、生物種の遺伝学的背景の相違から、ADPKDではマウスやラットで治療薬候補に効果があっても、ヒトでは有効ではない場合が多く、ヒト細胞を用いた有効な病態モデルを開発し、治療薬を探索する必要がありました。

私たちの科学顧問の研究グループは、ADPKDの原因遺伝子であるPKD1遺伝子に変異を有するヒトiPS細胞を作製し分化誘導することで、ADPKDの症状を再現した疾患モデルの作製に成功し、ADPKDの新規治療薬候補を発見しました(2023年12月1日リリース)。私たちは、この治療薬候補であるレチノイン酸受容体(RAR)作動薬を用いた臨床試験を2023年12月より開始いたしました。

今回治療薬候補として同定されたRAR作動薬は、再発・難治性の急性前骨髄球性白血病(APL)の治療薬として承認され、すでに臨床で使用されている薬です。そのため、治験は前期第二相(phase IIa)(注1)から開始することが可能となり、対象はADPKDの患者さんの中でも病態の進行リスクが比較的高いと考えられ、トルバプタンによる治療ができない、もしくは治療を希望しない患者さんです。被験者募集は、安全性確保の観点から段階的に行うよう計画しており、安全性・忍容性に問題ないことが確認され次第開始する予定です。

RN-014の臨床試験の詳細については以下のサイトをご確認ください。

臨床研究等提出・公開システム(niph.go.jp)

治験の実施にあたり、すでに多くの患者さんから期待の声が届いています。一日でも早く新規治療薬を患者さんのもとへお届けし、より良い生活を送っていただけるよう、私たちはチーム一丸となり、これからも日々邁進してまいります。

(注1) 前期第二相(phase IIa)
治療薬候補が効果を示すと予想される疾病状態にある限られた数の患者さんについて、治療薬候補の有効性と安全性を調べ、また用法・用量の妥当性などの情報を収集することを目的とする試験。